映画「ONODA 一万夜を越えて」遠藤雄弥/津田寛治

映画「ONODA 一万夜を越えて」遠藤雄弥/津田寛治
映画「ONODA 一万夜を越えて」

 映画「ONODA 一万夜を越えて」

 

 

わたしより上の年代の人なら、「オノダ」と聞けばきっとすぐに小野田寛郎さんを思い浮かべるであろう日本の有名人。

終戦後、29年も経ってからようやく日本に帰ってきた「最後の日本兵」「真の軍人」

戦争が終わったことを知らず、ずーっとずっとジャングルに潜み続けていたという話しは、子どもの頃に初めて聞いたときになんとも言えない不安とロマンを感じ、妙に心に引っかかり続けていました。今回の映画化を知り、これは観ねばと行ってきました。

 

↓ 事実を元に作られたお話しなので、若干のネタバレを含んで書いています ↓

 

物語は終戦間際の1944年。航空兵を目指すものの高所恐怖症で断念した小野田(遠藤雄弥)は特殊な訓練を受け、ゲリラ戦フィリピン・ルバング島に派遣される。訓練校の教官・谷口(イッセー尾形)から「必ず生き延びること。必ず迎えに行く。」と送り出される。

現地では戦況も悪く、隊も分裂してたった4人でジャングルに潜伏。しかし小野田以外の3人のうち、一人は若く小野田の厳しい目についていけず投降。一人は現地の人に撃たれ死亡。そして残った小塚金七(松浦祐也/千葉哲也)とたった2人で20年近くもジャングルに潜み続ける…

何もないジャングルの中、毒に当たらないように木の実を食べたり、木や葉を切り出して雨季も過ごせるように小屋を建てたりハウス名作劇場だったらわくわくどきどきの展開!

が、これはやはり戦時下(実際には戦後だけど、彼らの中では戦時中なのである)
常に敵を恐れて意識し銃を構え、ピリピリと身を潜めているのだ。

そんな生活を29年って、本当にありえない。よく胃に穴を空けずに生き抜いたなぁと思ってしまう。それと、小塚さんという仲間がいたからこそお互いに頑張れたのだなぁとも思う。

途中、先に投降し帰国した赤津(井之脇海)たちが日本へ帰ろうとジャングルまで迎えに来るのだが、小野田と小塚は「あれはよく似た人を使った偽物だ」と、戦争が終わったことを信用せず、2人だけが納得いくような理屈を考え出して受け入れようとしなかったのだ。そういうやり取りもまた、2人の絆を強めていたのかもしれない。

 

 

しかしそれも、小塚が現地の人に襲撃され命を落とすまで。

それまで生き生きと「自分たちが日本へ帰ったらヒーローになれる」と2人で強気に頑張っていたのが、小塚が亡くなるとあっけなく小野田(津田寛治)は目の力を失い覇気をなくしてしまったのだ。

小塚が亡くなったあとの一人でしょんぼり佇む津田寛治さん演じる小野田の姿にこちらまで胸がキュッとするような思いがしました。しかしその反面、この悲しい別れがあったからこそ、ようやく終戦を少しずつ信じようとする気持ちにもなったのかなとも思いました。人間の心の動きって、何がきっかけで起こるのかわからないものですよね。

それにしても小野田と小塚の青年期から中年への移り変わりが見事でした!
小野田役を遠藤雄弥さんから津田寛治さんへ。小塚役を松浦祐也さんから千葉哲也さんへ。
2役ともまったく違和感なく、というかむしろ一人の人がずっと演じ続けているのではと思うくらいで、ここまでぴったりの人選もなかなかないのではないかと思います。

最後、日本からやってきた青年(仲野太賀)と遭遇するシーンには、もしかしたら小野田さんが津田さんに乗り移っているのではというぐらいのピリピリした空気が張り詰めていました。いやスゴイ!

余談ですが物語の中で、小塚とお互いに髪を小さなハサミで刈り合うようなシーンがあったのですが、小塚が亡くなり一人になったあとも小野田の髪がきちんと刈られていて、自分であんなに上手にできるのかな?と少し疑うような気持ちで観ていたのですが、鑑賞後に小野田さんのことが色々気になり調べている中で、ジャングルをあとにする写真では実際の小野田さんの髪もとてもキレイに刈られていて、一人でも崩れない姿勢に身が引き締まる思いがしました。

この映画のコピー、「彼は何を信じ、何と戦い、そしてどう生き抜いたのか。」
観終えたいま、なおこの言葉が胸に響きます。

 

みちよメーター
涙   度:4★★★★
戦争反対度:5★★★★★

 

映画:ONODA 一万夜を越えて
監督:アルチュール・アラリ
脚本:アルチュール・アラリ
公開日:2021年10月8日

 

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